「ちょっとカタいお話」
スケールモデル競技とは
スケールモデルによる競技とは一体どのような競技なのでしょうか?
スケールモデル競技の飛行について考えれば、確かに飛行演技の中には宙返りやロール等の飛行があります
が、スタント競技とは異なり、パターンを飛行させてその正確さを評価するだけの競技ではありません。又
パイロンレースのようにパイロンの周りを周回してその速度を競う競技でもなく、グライダーやフリーフラ
イト機のように滞空時間を競う競技でもありません。
モデルの出来栄えを競うという観点から見ても、同一のモデルだけでの競技会であればともかく、様々な
タイプのモデルでの競技ともなれば、その優劣を競い合うのは基本的に難しいものがあります。
スケール競技は出来映えだけを競う競技ではない
モデラーの皆さんの大多数は、スケールモデルの競技会とはモデルの出来映え、つまりよくモデル誌に掲
載されている「これがスーパースケールだ・・・」といったような素晴らしい仕上がりのスケールモデル等
が主役?で、モデルの出来映えだけで競い合う競技だと誤解されていることと思います。
スケール競技は、フライング・スケールモデルの名前の如く、飛んでこそナンボの世界であることを理解
して欲しいのです。
スケールモデル競技は、その歴史の中の試行錯誤で後述するようなF4Cスケールという形がようやく整
い、これが現在では国際的にも国内的にも標準的なルールとして定着してきました。
スケールモデルの競技とは、簡単に云えば実機らしい飛行と、実機らしい出来栄えの総合で順位を競いあ
う競技なのです。従ってスケール競技に参加するには、「私の飛行機では恥ずかしくって・・・」等と出場
前からモデルの出来映えだけで優劣を決めてかかって出場をためらうのは全くナンセンスなのです。出来栄
えを評価する「静止審査」は後述するF4C競技では最大でも全得点の50%にしか過ぎないのです。スケ
ール競技は、何度も繰り返しますが「飛んでこそナンボの世界」なのですから、どんどん参加してスケール
競技を楽しんで戴きたいものです。
実機らしい飛行とは?
何度も「飛んでナンボの世界」だと言いましたが、それでは実機らしい飛行とはどのような飛行なのでし
ょうか?
スケールモデルは実機のスケールですので、多種多様なバラエティーに富んでいます。実機らしい飛行と
は夫々の機体、例えばムスタングならムスタングらしく、セスナ170ならセスナ170らしく、クラシッ
クな第一次大戦機ならばそれらしく飛行させることなのです。そこで実機らしさを表現する大切な要素は、
飛行速度、エンジンの音、それと実機らしい動作です。そしてこれらの要素は飛行の夫々の場面、例えば離
陸時、降下時、曲技の間等で違ってくることが大きな特徴と云えましょう。
例えば離陸後の最初の旋回一つでも、速度が充分に無い状態を仮定して(当然モデルもゆっくりと上昇さ
せていますが)ゆったりとした旋回への傾けと、同じく浅いバンク角でのゆったりとした旋回が実機感を作
り出すのです。
これを忘れて(考えずに)いつもスタント機などで行っているのと同じように、いきなり深いバンク角に
エレベーター主体で旋回したりすれば、それだけで実機感は吹き飛んでしまい、その離陸演技に対する、ス
ケールフライトとしての評価は低いものとなってしまうのです。スケール機のフライトはややもすれば単調
で簡単に見えますが、根本的に違うのは図形を描くスタント機に対し、スケール機は実機のようにフライト
させる、つまり実機感がもっとも重視される所にあります。この辺りを選手の方も、又ジャッジの方も理解
して戴きたいと思います。
話はそれますが、フィギュアスケート競技などを見ていると、丁度F4Cスケール競技のように規程演技
とフリー演技や、美術点の合計で総合得点が決まるところなどはスケール競技と似たところがあるな・・と
感じることがあります。
スケール競技の在り方
その反面、というかスタント競技等とは対照的に、出場する多種多様なモデルはバラエティーに富んだ華
やかな雰囲気を演出し、選手も又観客もその雰囲気を充分に楽しめるところがスケール競技の大きな特徴で
もあると言えるでしょう。
そしてこの辺りがスケール競技の原点でもあり、スケールを愛する仲間との交歓や、様々なタイプのスケ
ールモデルを観察できる楽しみ等、スケールモデルの競技会には他の競技会には見られない華やかさと、楽
しさに満ちているといえるでしょう。
そして主催者側も参加者側も、競技会の実施にあたっては、決して形式や格式に拘ったり、権威主義に走
ったりすること無く、前述したように競技会であると同時に、スケールモデラー同士の交歓の場なのだ!
といった基本を忘れずに、楽しく、明るいスケール競技の在り方を大切にして行きたいものです。
F4Cスケール競技
読者の皆さんの内には、F4C競技とはどのような競技なのか、まだ十分にはご存知ない方もおられると
思いますのでまずこのF4C競技から紹介して行きます。
F4Cスケール競技は、先に述べた静止審査と、飛行審査とで構成されています。そして両者の点数配分
は同じなのです。つまり静止審査でいかに高得点を得ても、それはF4C競技としては総合得点の50%の
中での高得点であって、残りの50%の飛行得点が無くてはF4C競技としての意味が無くなってしまいま
す。
従来はこの静止審査の部分だけがなぜか強調されて、今までF4C競技とは「図面や写真など、たくさん
の資料を参照して製作した、精密なモデルの出来映えだけを競う競技」と云った印象を皆さんに与えてきた
ように思われますが、F4C競技の本質は実機らしい飛行得点と、資料に基づいて製作されたモデルの静止
審査得点の合計なのです。
単に飛行技術のみならず、その時々の天候や諸々のコンディションが影響する飛行演技得点および静止審
査得点のために、より完成度の高い機体製作にかける長く忍耐強い努力とのバランスが、このF4C競技を
素晴らしいモデルスポーツとして完成させていると云えるでしょう。
F4C競技規定はページトップの3項をクリックしてください。国際スケール競技であるF4C競技を、
スケール競技の最高目標とすれば、その他にも色々なレベルと目的に応じたスケール競技がありますので、
それらを紹介して行きます。
F4Hスケール競技
この規程の特徴はF4Cにおける、複雑でかつ高度な工作技術を要求される(・・もしくは要求されてい
ると誤解されている)機体作りや、完璧な資料の収集が不可欠と思われている(・・と誤解されている)静
止審査への偏見を除外して、スケールモデルのフライトを楽しみながら競技をしようという点にあります。
静止審査はありますが、資料は簡単な図面と写真程度です。勿論市販のキットからそのまま製作したモデ
ルでも良いし、近頃はやりのARF機の改造でも、飛行に自信があれば充分にこのクラスを楽しむことが出
来ます。
スタント機の世界でもスポーツマン・クラスからアドバンスへ、そしてエキスパート、マスターズへとい
った技術に応じたクラスがあるように、F4Hクラスは、スケールモデルを楽しむのと同時に、規定の構成
内容はF4Cスケール競技とは基本的に同じなので、更に上級のF4Cクラスを容易に目指せるといった意
味合いもあります。
しかしこのクラスの最大の目標は、出来るだけ沢山のモデラーにスケールフライトの楽しさと、それにも
増してスケール競技の楽しさを知って貰うことです。
従来国内でのスケール規定として、イギリスのBMFA(英国模型飛行協会 注:日本の模型航空連盟に
相当)規定のクラブマンクラスを初心者クラスと導入しておりましたが、F4Hクラスの導入に伴いクラブ
マンクラスは廃止となりました。
F4Hクラス競技規定はページトップの4項をクリックしてください。
スケール・スポーツマンクラス
このクラスは、近年のFAIルール改定によるF4C、F4Hのレベルアップが日本の現状にそぐわない
ため、スケール競技をより広く普及させるため、より簡単なスケール競技規則が必要という要望により新設
された競技です。
この規定の骨子は、従来スケール競技への参加にあたりネックであった「静止審査」を無くし、スケール
モデルであればどのような機体でも参加できるようにした事と「自作規定」が無い点にあります。
F4Hクラスと同様に、あくまで初心者がスケール競技に参加しやすくする目的で設立されたもので将来
的には、F4Hスケール、F4Cスケールを志向して頂くのが目的です。
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